2010年6月15日火曜日

まぐろの中落ち

今日、お魚コーナーで、パックに入った
天然、生マグロの中落ちを買った。

植物油が混ぜられて変にテカテカした偽物まで
あるような昨今。買おうなんて思ったのは
本当に久しぶり。

信頼できるお店だったから買ったのだけれど、
目に入った瞬間、子供のころの記憶がよみがえった。
「あの時の味を、食べたい」と思った。

私にとっての思い出の味は残念ながら母の味ではない。

割烹を営んでいたわが家では、毎日若い衆が鰹節を削る。
良い香りがしてくるとお椀を持って近寄って、
削りたての鰹節をひとつかみもらう。
そして、小さく小さくなった鰹節のかけらも。

子供は調理場には入ってはいけないんだけど、
父は私には甘かったので(笑)、魚をおろし終わる頃を
見計らって、小皿を持って父の立つ板場に近づく。

包丁を持っている時は怒られるので、小さなスプーンに
持ち替えた時が絶好のタイミング。
これから魚の中落ちを取るのだ。
まぐろの時は特に注文をつける。

「アサツキとわさびをいっぱいちょうだい。」

3歳の私の、至福の時でした。


今日、炊きたてのご飯に中落ちを載せてお醤油を
かけて、食べた。

やはりあの時には到底及ばない。
でも、美味しかった。

丼から口に運びながら、少しづつあの時食べた
甘みのあるねっとりした中落ち、そして、
おろしたてのわさびの味が蘇った。

涙が出た。

もう36年も前の出来事を亡き父と一緒に思い出している
ような感じがした。

味覚ってすごいな。
食べ物ってスゴイな。

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kominka

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